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アクテム・ジーワン オーディオ レポート

第一回 プリアンプ編
第二回 パワーアンプ編
第三回 マルチアンプシステム編
第四回 チャンネルディバイダ編
第五回
 電線編
第六回 静電容量編
第七回 負帰還編



***********  第4回 チャンネルディバイダ編  ***********

 

チャンネルディバイダーについて

 マルチアンプシステムに不可欠なチャンネルディバイダーは、市販品が少ない上に高価ですから、アマチュアにとって最も作り甲斐があり、成功すれば市販品では得られないものを手にすることができます。かって、国内でハイエンドと言われている製品の中身を覗いたことがあります。高域のフィルタには音が良いと言われているマイカキャバシタが使われていましたが、低域のフィルタはマイカではありませんでした。大容量のマイカキャパシタは高価です。原理的には誘電材料としては硬い方がよいと思います。少しでもよい音をと思って、高分子フィルムキャパシタは止む得ぬとき以外使いませんので、マイカがポリカーボネートなど高分子フィルムと較べてどの程度すぐれているかは確認しておりません。定評のある双信のSEキャパシタで4チャンネル用を作ると、すごい金額になります。そこまでしなくてもという場合は、価格が4分の1くらいのディップマイカキャパシタを使いますが、それでも相当の金額になります。全部双信SEキャパシタのチャンネルディバイダーを使った4チャンネルマルチアンプシステム(DCプリアンプ、低域は直流まで通る4チャンネルディバイダー、8台のUHC MOS FET DC パワーアンプで構成)を何年も使っていますが、スピーカーの存在を感じさせない自然な音がします。

 チャンネルディバイダーの中身はローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタで、アクティブフィルタの場合は、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低い利得1のアンプ、いわゆるボルテージフォローワーが多数必要です。その上、チャンネルディバイダーが独立してケースに収められている場合は、各チャンネルのパワーアンプと接続するケーブルが長くなりがちですから、出力段にラインドライブ機能が必要です。結局、4チャンネルステレオでは、8台のラインドライバーが要ることになり、コストアップの原因になります。経費を削減するには、すでにお話したように、チャンネルディバイダーを分割して、それぞれのフィルタをパワーアンプに入れます。そうすると、チャンネルディバイダーのラインドライブアンプ、ケース、電源、およびケーブル8本が要らなくなり、ハイエンド機器では10万円程度の節約になるでしょう。このとき、各チャンネルのレベル調整は、それぞれのパワーアンプの入力回路にアッテネーターを入れて行ないます。

 チャンネルディバイダーに使うボルテージフォローワーは全段コンプリメンタリー構成にし、トランジスタは厳選の上ペアーを組みます。そうすれば、通常の使用状態において、出力ドリフトは直流まで通る低音用ローパスフィルタでも±5mV以下にでき、電源オンオフの動揺も少ないのでリレーも要りません。

 最適クロスオーバー周波数と遮断特性(減衰特性)は、スピーカーとその組み合わせによって異なります。一例を挙げると、低音JBL2235H、中低音JBL2123H、中高音JBL2420、高音パイオニアPT‐R9の場合、クロスオーバー周波数は270Hz、1.2kHz、8kHz で、遮断特性は18db/octaveにしています。JBLのスピーカー端子の色分けは極性が他社と逆ですから注意が必要です。パイオニアPT‐R9は癖のない優れた製品で中古市場でもすぐ売れてしまう評判のリボントゥイーターですが、クロスオーバー周波数を8kHz以上にし、遮断特性も18db/octave以上にした方がよい結果が得られます。低い周波数成分が入るのは禁物です。中高音にホーンを使う場合はクロスオーバー周波数をホーンのカットオフ周波数より1 octave 近く上げて下さい。さもないと、ホーン臭い嫌らしい音になります。ウーハーはクロスオーバー周波数を上げると、たちまちやかましい感じの音になります。カタログ特性よりずっと低めで使うのがコツです。3チャンネルマルチではそうも言っておれないので無理をしがちで、それが失敗の原因になっているのをよく見かけます。中古市場にはJBL2420、2440がよく出ていて2440の方がマグネットも一回り大きく値段も3倍くらいします。2420に中低音スピーカー(JBL2123Hなど)を加えて4チャンネルにするのと、2440を中音にして3チャンネルにするのでは、費用はあまり変わりませんが、格安の2420あるいはその後継機種を使って4チャンネルにすることをお勧めします。

 レベル合わせにはいろいろな楽器で演奏された音楽ソースを使いますが、多かれ少なかれ癖がありますから、多くのソースを用いて丹念に気長に調整します。音量を上げてやかましくならなくなったら、かなりよく仕上がったと言えます。自分で楽器を演奏したり、コンサートによく出かける方は比較的簡単にできます。自信のない方は、まずスタックスのコンデンサヘッドホーンで音合わせをし、そこから丹念に微調整をすれば、部分的には特に低音はこれを凌駕するようになり、スピーカーの存在を感じないようになります。

 レベル合わせは疲れているときはうまく行きません。騒音の中にいた後、お酒を飲んだ後も駄目です。体調の良い頭がクリアーなときに限ります。
(by 師匠 A.K.)
2007.04.07

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